サステナビリティ活動の推進にあたって
関電不動産開発は、関西電力グループの総合不動産デベロッパーとして、オール電化のものづくりやまちづくりにこだわりながら、関西を中心に首都圏や仙台、名古屋、福岡などの中核都市で、さらに米国や豪州を中心とした海外でも事業を展開しています。「人に、街に、明るい未来を」をコーポレートスローガンに掲げ、主要3事業セグメントである分譲住宅事業、賃貸投資開発事業、海外事業を中心に、人々の安心で快適な暮らしやビジネス、憩いの場の提供などを通して社会に寄与するさまざまな不動産サービスを提供してきました。私は、社長として、また、全社のサステナビリティ推進統括責任者として、今までの活動をさらに発展し成長させ、新たな価値創造を目指していきたいと思います。
安心で快適なまちの基盤づくりを通じ、持続可能な未来の実現に貢献
昨今、不動産業界を取り巻く経営環境において大きな変化が起こっています。地球温暖化による気候変動は都市の持続可能性を脅かし、自然災害のリスクも高まっています。また、長期化するウクライナ情勢による影響やアフターコロナの世界経済回復は不安定で楽観できない状況が続き、物価上昇や金利上昇などマクロ経済環境に大きな変化が起こっています。ここ数年にわたり世界を席巻したコロナ禍により、人々のライフスタイルや働き方は多様化し、住宅やオフィスに求められる役割にも変化が見られ、将来に向けたまちづくりにおけるゼロカーボンの重要性や必要性がさらに高まってきています。
外部環境の変化に対応しながら、持続可能な未来の実現を目指した取組みを継続することが当社の事業の根幹です。企業としての成長と社会への貢献を両立させていくという決意を、2022年4月に刷新した経営理念「安心で快適なまちの基盤づくりを通じて、持続可能な未来の実現を目指す」に反映しています。
これまで培ってきた実績と知見をベースに、私たちは今、「不動産業界のゼロカーボンリーディングカンパニー」を目指した挑戦を進めています。10年先、100年先を見据える長期的な視点を意識したサステナビリティ経営で社会に確固たる存在感を示していきたいと思います。
ゼロカーボンの選択肢を社会に
総合不動産デベロッパーとして当社が向き合うべき課題は多岐にわたります。環境側面(E)では、気候変動、ゼロカーボン、資源循環など、社会側面(S)では人権、人材育成、ダイバーシティ&インクルージョン、サプライチェーンマネジメントなどへの対応を考える視点が不可欠です。ガバナンス側面(G)では、コンプライアンスや内部統制の強化も重要です。ESGそれぞれに定めたサステナビリティ方針のもと、これらの課題を一つひとつ着実にクリアしながら事業を行っていく必要があります。
環境をめぐっては、日本が2050年のカーボンニュートラル実現を目指す中、住宅やオフィスビルなどの開発で実質的に温室効果ガス(GHG)を排出しない「ゼロカーボン」が、不動産価値を向上させる時代が到来しています。当社はこれまで、関西電力グループの一員として、業界に先駆けてオール電化のマンションやオフィスビルを供給してきました。オール電化とCO2フリー電気の組み合わせによるゼロカーボンの選択肢を社会に提供することは、当社にとって極めて重要な使命と考えています。2023年度以降に新規開発するすべての住宅・オフィスビルなどにおいてZEH・ ZEBを標準仕様化するなど、高い省エネルギー性能の採用により社会のエネルギー消費量の低減も追求します。
「不動産業界のゼロカーボンリーディングカンパニー」というありたい姿の実現に向け、GHG排出量削減目標を、2030年度にScope1+2+3で37.8%削減(2021年度比)、Scope1+2で70%削減(2021年度比)と定めて、取組みを着実に推進していきます。
現在推進中のプロジェクトでは、本社を置く大阪・中之島エリアで開発中のタワーマンション「シエリアタワー中之島」(大阪市福島区)で、「実質CO2ゼロエネルギーマネジメントシステム」を導入。オール電化マンション全体にCO2フリー電気を一括供給し、マンション全体でのCO2排出量を実質ゼロ化するもので、本システムは2022年度グッドデザイン賞を受賞しています。
また、「堂島関電ビル」(大阪市北区)では、環境に加えウェルネスにも配慮した大規模リニューアルを進めています。オール電化とCO2フリー電気供給でゼロカーボンを実現する他、築50年超となる既存ストックの活用でライフサイクルCO2を削減します。さらに、ビルを利用するワーカーの健康や快適性を向上させるオフィス空間の再構築など、複合的な価値を提供しています。
「人の輝き」を生み出す企業として
住宅やオフィスビルなど、まちの基盤をつくる当社の事業は、人々の生活に直接関与するもので、「人」を大切に考え事業に取り組んでいます。ブランドステートメントに掲げるビジョン「一人ひとりが輝くコミュニティであふれる社会」とミッション「多様性を尊重し、つながりが生まれる空間を創る」を実現することが、私たちの事業そのものと言えます。お客さまやお取引先をはじめ、当社に関わるすべての人が輝くことができる多様なコミュニティが次々に生まれる社会を目指します。
そのような事業を行うためにはまず私たち自身が一人ひとり輝きながら働くことが必要だと考え、「人の輝きこそ、すべての原点。」を人事指針の中心に据え、ワークエンゲイジメントや人材育成、健康経営に注力しています。従業員がやりがいを持って働けるよう、ビジョンやキャリアデザインを重視し、本人の希望を尊重した計画的なジョブローテーションなどを実施しています。また、多様なワークスタイルの実現によりダイバーシティ&インクルージョンの推進にもつなげています。
「人」を中心に据えたこのブランドステートメントは、若手社員を中心としたプロジェクトチームをつくり、徹底した議論を重ねて2021年に策定したものです。以後3年間にわたり、ワークショップやインナーブランディングムービーなど社内浸透活動を推進してきました。当社がさらなる成長を目指していくために、ブランドステートメントの価値観の共有や自分事化のための活動は非常に大切であり、今後も継続していく予定です。
マテリアリティを特定し、事業とサステナビリティの一体化へ
ステークホルダーから信頼され続ける企業であるためには、内部統制やガバナンス、コンプライアンスの継続的な強化も欠かせません。当社のサステナビリティ推進体制は、社長の直轄組織として、サステナビリティ委員会・内部統制委員会・健康経営委員会を設置しています。内部統制委員会は2024年度に新設したもので、従来はサステナビリティ委員会下にあったコンプライアンス部会、リスクマネジメント部会をこの下に移管し、内部統制の推進体制の強化を図りました。ガバナンス体制については正解があるわけではないので絶えず見直しを重ね、より公正で透明性のある組織であり続けられるよう目指していきます。
サステナビリティの取組みを事業内容に具体的に落とし込むために、マテリアリティ(重要課題)に紐づける形で事業内容をESG取組み項目・目標として設定しています。これらは、関西電力グループのマテリアリティをベースに、不動産デベロッパーとしての事業特性やありたい姿をもとに策定しているもので、今後取組みをさらに充実させていきたいと思います。
ステークホルダーの皆さまと共に
サステナビリティ(ESG)に関する情報は、これまでにもWEBサイトにて発信してきましたが、2024年7月に当社として初めて「サステナビリティレポート」を発行すると共に、2024年11月にはWEBサイトについても刷新しました。今までの取組みをあらためて整理し、振り返ると共に、社内外のステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たし、コミュニケーションツールとして活用していきたいと考えています。
関電不動産開発は、変わり続ける社会のニーズを機敏に捉え、「ゼロカーボンの選択肢を社会に」提供し、「一人ひとりが輝くコミュニティであふれる社会」の実現を目指す企業として、新たな価値創造に取り組んでまいります。皆さまからは忌憚のないご意見をいただければ幸いです。