トップメッセージ

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「人の輝き」を力に、持続可能なまちづくりに挑み、「不動産業界のゼロカーボンリーディングカンパニー」を目指します 代表取締役社長 福本 恵美 「人の輝き」を力に、持続可能なまちづくりに挑み、「不動産業界のゼロカーボンリーディングカンパニー」を目指します 代表取締役社長 福本 恵美

2024年度を振り返って

2024年6月に社長に就任し、この1年は関電不動産開発の舵取りを任される初めての年となりました。振り返れば、外部環境の変化が激しく、不透明感が強まる中でのスタートでした。世界では米国政権による貿易問題、ウクライナや中東での紛争といった不安定な状況が続いています。国内においても、為替変動や物価高など人々の暮らしに関わる問題が山積しています。
私たちの不動産業界においては、建設現場での労働力不足や資材の高騰といった課題が継続し、建築コストの上昇をめぐって難しい判断を迫られる場面も増えています。適切な賃金水準への引き上げは、現場で働く人々を守るためにも必要なことであり、それを踏まえた計画を策定し、柔軟に対応していくことが欠かせません。
一方、夏の異常な暑さや頻発する自然災害を受けて、気候変動の深刻さはだれもが実感するところとなりました。当社はゼロカーボン社会の実現に向けて、環境性能に優れた建物の開発に取り組んでいますが、それに対する理解や共感が、以前よりも確実に広がってきていると感じます。そのためのコストの上昇についても、「必要な投資」として前向きに受け入れていただく機運が高まっています。

写真:関電不動産渋谷ビル 共用ラウンジ
関電不動産渋谷ビル 共用ラウンジ

環境変化の激しい中ではありますが、当社の事業は概ね順調に推移してきました。コロナ禍の収束により、「オフィスに戻る」傾向が強まったことも追い風となっています。一時は在宅勤務を前提に座席数を絞った設計が主流でしたが、現在では「スペースが足りない」といった声も聞かれます。実際、大阪や東京の都心部ではオフィス空室率が大きく低下しています。
あらためて、オフィスという場の価値が見直されていることを実感します。離れていてもコミュニケーションは可能ですが、対面で語り合う中でこそ生まれるアイデアや新たな発想は確かにあります。優秀な人材の採用や定着のため、オフィスを刷新する企業も増えており、当社においては、「関電不動産渋谷ビル」で今後どのようなオフィスが求められるのか若手従業員を中心に商品を企画しました。今後もニーズに応える空間づくりに、引き続き注力していきます。

写真:関電不動産渋谷ビル 共用ラウンジ
関電不動産渋谷ビル 共用ラウンジ

人に、街に、寄り添うまちづくりを推進

写真:シエリアタワー中之島(完成予想図)
シエリアタワー中之島(完成予想図)

当社の総合力を体現する象徴的なプロジェクトがいくつも動き出しています。首都圏初のタワーマンションとなる「シエリアタワー南麻布」の開発は、その代表例の一つです。もともとオフィス用地として取得していた土地を、柔軟な発想で大規模マンションへと転換したものです。地域の特性やお客さまのニーズに丁寧に向き合いながら、上質な空間づくりへとつなげました。首都圏でこうした大規模案件を手がけられたことは、当社にとって大きな前進であり、嬉しく思っています。
既存ストックの活用では、築53年の「堂島関電ビル」の全面リニューアルも、当社らしさが発揮された成果となりました。テナントである積水化学工業様のご協力のもと、ワンフロアごとに移動し、入居を継続いただきながらビル1棟をすべてリニューアルしました。既存建物を活かすことで、解体・新築に比べてCO2排出量を約50%削減できた意義は、非常に大きいと考えています。
大阪・中之島では、大規模タワーマンション「シエリアタワー中之島」の開発が進行中です。関西電力グループが長年本社を構えてきた中之島は、当社にとっても「一丁目一番地」と呼ぶにふさわしい、特別なエリアです。美術館や医療機関、文化施設、歴史的建造物などが集まり、水辺の景観にも恵まれた環境には、大きなポテンシャルを感じています。近年は住宅開発も進み、夜間人口の増加により、「職住近接」のまちとしての姿が少しずつ形になりつつあります。
「シエリアタワー中之島」では、オール電化マンション全体にCO2フリー電気を一括供給する「実質CO2ゼロエネルギーマネジメントシステム」を導入し、環境負荷の少ない都市型住宅の新しいモデルを提案しています。「ゼロカーボンの選択肢を社会に」を掲げる当社の姿勢を、まちづくりの中で具体的に示す場としていく方針です。
また、持続可能なまちづくりに向けて、近年力を注いでいるのがスマートエコタウンです。第一弾となった「スマートエコタウン星田」に続き、2024年度には「スマートエコタウン宝塚中山」の販売がスタートしました。さらに、JR島本駅周辺でもマンションと戸建て住宅の複合開発を計画しています。
スマートエコタウンでは、省エネルギーなど環境配慮を推進するほか、地域に暮らす方々のつながりを生み出すような仕組みづくりにも力を入れています。地域の集会やイベント活動などが行える共用スペースの設置など、家族構成やライフスタイルが多様化する中でも自然な交流が生まれる環境の整備は、暮らしの安心につながるものと考えています。

シエリアタワー中之島(完成予想図)
シエリアタワー中之島(完成予想図)

持続可能な未来に向けた挑戦

気候変動への対応が一層重要性を増す中、私たちに求められるのは、「不動産業界のゼロカーボンリーディングカンパニー」を目指す者としての姿勢を明確に示すことです。賃貸物件・分譲マンションなどへのオール電化やCO2フリー電気の導入、ZEH・ZEBの標準仕様化などに、私たちは積極的に取り組んできました。こうした取組みは、エネルギー事業を営む関西電力グループの一員であることを活かし、最先端の省エネルギー技術・サービスをいち早く実装できる当社ならではの強みとなっています。
2023年度には、2030年度をターゲットとするゼロカーボンロードマップを策定し、2021年度比でScope1+2の70%、Scope1+2+3の37.8%を削減することを掲げました。高い目標であり、決して容易な道のりではありませんが、一つひとつ課題を乗り越え、着実に前進していく覚悟です。
環境と向き合う私たちの姿勢は、エネルギー領域にとどまらず、自然との共生にも広がっています。その一例が、生物多様性の視点を取り入れた「シエリアLinkGreensプロジェクト」です。地域に根ざした樹種の採用をはじめ、独自の生物多様性保全方針とデザイン指針を定めており、2024年度以降に着工するすべての物件で実装を進めています。
例えば「シエリア京橋ウエスト&イースト」では、市街地の一角において、大阪城の豊かな緑とつながり合うような植栽計画を導入しました。限られたスペースでも、都市の中で生物多様性を取り戻すことを目指しました。こうした取組みを通じて、住まわれる方や地域の皆さまにとって、心地よさを感じられる風景を育んでいけたらと考えています。開発によって地域の姿が変わっていくからこそ、その土地に根づいてきた樹木や草花を残し、記憶や歴史を次の世代につないでいきたい―そんな想いを込めています。

図:関電不動産開発 くろよんの森

2024年度にはさらに、「シエリアツリープロジェクト」を始動しました。分譲マンション「シエリア」または分譲戸建て住宅「シエリアガーデン」のご契約1件につき苗木1本を「Present Tree」を通じて植樹する取組みを進めています。今後は当社保有地である「関電不動産開発 くろよんの森」でも展開していく計画です。入居者の皆さまが「自分の木がどこかにある」と思いを寄せて訪れてくださることで、地域の活性化にもつながることを期待しています。

図:関電不動産開発 くろよんの森

チャレンジを続ける従業員が、会社の活力に

私たちの事業や社会の根幹にあるのは、常に「人」です。2021年に策定したブランドステートメントのビジョン「一人ひとりが輝くコミュニティであふれる社会」には、そうした想いを込めています。このステートメントの策定にあたっては、「人を大切にする」「チャレンジする」といった価値観を、さまざまな部署から集まった従業員自身が言語化し、全社に発信してきました。策定後4年目となる今、それらは企業風土として着実に定着してきています。
新入社員が長く働き続けてくれる職場環境があることも、その表れだと感じています。直近6年間では新入社員の離職はゼロであり、若手従業員が入社2、3年目でプロジェクトの中核を担う例も少なくありません。私は「仕事がおもしろくなければ、毎日を楽しめない」と考えており、活き活きと働く従業員の成長こそが、会社全体の活力につながると信じています。だからこそ、現場の裁量を尊重し、思い切って任せることを基本に、「いろいろなことにどんどんチャレンジしてほしい」というメッセージを、日頃から伝えるようにしています。
2023~2024年度には、「サステナビリティ拡充ワーキング」を立ち上げ、従業員から自由な発想によるアイデアを募る、ボトムアップ型の取組みを進めました。約300件にのぼる提案が寄せられ、その中から33項目を選定し、具体的な施策として落とし込むことができました。「シエリアツリープロジェクト」や「関電不動産開発 くろよんの森」といった象徴的なプロジェクトが、このワーキングから生まれたのは非常に意義ある成果だったと感じています。

写真:代表取締役社長福本恵美

ハラスメントのない職場づくりを目指した「アクティブ・バイスタンダー研修」の導入も新たな試みとなりました。「ハラスメントをしない・されたらどうする」といった内容に留まらず、「その場にいる第三者にこそできることがある」という能動的な視点を取り入れたこの研修は、職場の問題をタブー視せず、オープンに語り合う風土を育む上でも重要だと考えています。現在は中堅社員を対象としていますが、今後はさらに対象を広げ、全社的な取組みとして定着させていく計画です。
そしてこの研修もまた、社内の人権担当者が導入に向けて積極的に動いたことで実現したものです。一人ひとりの自発的な行動が、新たな価値を生み出す姿を目にするたび、「人の輝きこそ、すべての原点。」であるという確信を、ますます強くしています。

写真:代表取締役社長福本恵美

信頼される企業として、継続的なガバナンス強化へ

ステークホルダーの皆さまの信頼に応え、持続的な成長を実現していくためには、ガバナンスの強化も不可欠です。2024年度には「内部統制委員会」を新設し、従来サステナビリティ委員会の傘下にあったコンプライアンス部会およびリスクマネジメント部会を、その下部組織として再編しました。独立性と専門性を高めた新たな体制のもと、既に一定の手応えを感じ始めています。2025年度は、さらに一歩踏み込んだ取組みとして、グループ各社の「3線管理体制」の確立に向けた準備を進めています。
グループ会社の事業内容は多岐にわたる中、横断的なガバナンスは簡単ではありませんが、共通して取り組むべき課題は多々あります。各社がそれを「自分事」として捉え、連携を深めていくことが何より大切です。ガバナンス強化に終わりはなく、グループ内外の環境変化を見据えながら、今後も粘り強く取り組んでいきます。
未来に向けた私たちの挑戦は、決して一社だけで完結できるものではありません。関電不動産開発は、これからも多様なステークホルダーの皆さまと手を携え、安心で快適なまちの基盤づくりを通じて、持続可能な未来の実現を目指し続けます。

私の失敗学

写真:代表取締役社長福本恵美

私は、とにかく「やってみないと分からない」タイプなので、失敗も人一倍あります。新入社員の頃、オール電化の営業で、設計事務所の方々向けの初プレゼンの時、緊張で頭が真っ白になりました。本当に落ち込みましたが、事前準備の大切さを学び、それ以降は必ず備えを怠らないようになりました。その後、役職の立場になり、部下がさまざまな困難を乗り越えて成功した時、自分の成功の何倍も嬉しく感じます。私も多くの機会に恵まれたように、今は、チャンスを次の世代に渡す番。失敗を恐れない挑戦こそ、成長への近道だと信じています。